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「見ておいた方が、知っておいた方がいいリスト」(追加あり)

【追加】
▼「ダーウィンの悪夢」
3月5日(日)午後10時10分~ NHK・BS1放送
http://www.nhk.or.jp/bs/wdoc/

※コメント欄ですでにご存知の方も多いと思いますが、昨年の「山形ドキュメンタリー映画祭」で、あちこちで話題になっていたのがこの作品でした(以前このブログでも紹介)。「グローバリゼーション」の行きつく果てが描かれているこのドキュメンタリーを観ると、まさしく世界は「負の側面」でもつながっている。地上波でも再放送されるように、ぜひNHKにリクエストしてみてください。

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だいぶ久しぶりですが、「見ておいた方が、知っておいた方がいいリスト」です。書こう書こうと思って、だいぶ遅くなってしまいました。

以前別のHPでも書いたのですが、http://www1.odn.ne.jp/watai/031024.htm 
僕が始めて観に行った03年の「山形国際ドキュメンタリー映画祭」での、話題作がちょうど同時にいくつか東京で上映されます。

この欄で告知するものがどうしても東京での催し中心になってしまい、本当に申し訳ないのですが、恐らく何ヶ月か後にはいくつかの映画館でも上映されるのでご期待下さい。

最初はもう上映が始まっている「スティーヴィー」http://www.moviola.jp/stevie/

「ポレポレ東中野」http://www.mmjp.or.jp/pole2/でいま上映されているが、お客さん入っているかな(大阪では4月から上映予定)?

03年の山形映画祭では、会期中ほかの人に「何か面白い作品ありましたか?」と聞くと、かなり多くの人が「『スティーヴィー』だよ」と答えていた。僕も観終わってから、ある映画館の支配人の方に、「これはすぐ日本でも上映されるでしょう。ヒットするんじゃないですか?」と僕がのんきに聞いたら、彼は「いや、そんなに甘くはないよ。どうかなあ、難しいかな…」と、首をひねっていた。

あれから2年半。当時のほかの受賞作品も含め、http://www.city.yamagata.yamagata.jp/yidff/2003/2003.html日本の映画館でこれまでに上映された作品はほんのわずか。本当に彼の言うとおりだった。

「犯罪被害」に関しては多くの問題がこのところ露呈している。「犯罪被害者に対する支援」はもちろんだが、「犯罪被害者の警察発表が匿名」になる問題、それから最近のメディア取材現場での「家族・遺族からの取材自粛要請」、そして相次ぐ事件を受けて、「子どもをどう守るか」という動きなどは全国的な広まりだろう。あるいは街中の監視カメラ設置の動きなども連動して、だんだん「犯罪不安列島」になっていっている。

そんななかで、この「犯罪加害者と、彼に寄り添う人々」を描く「スティーヴィー」は、果たして観る人たちにどう受け入れられるのか?監督のスティーヴ・ジェイムスも「この映画を作るべきだったのか」「誰がこんな映画を観るのだろうか」と悩み続けたという。

しかし、「加害者が後に被害者に」、「被害者が後に加害者に」なっていく構造は、歴史をさかのぼれば、あるいはさかのぼらなくなって、いま世界の、日本のあちこちで起きているんじゃないのか。僕としては、「いまこの時期にこそ、日本で絶対に観られるべき映画」だと思っている。

今週末(4日)から渋谷で公開される「送還日記」http://www.cine.co.jp/soukan/もまさしくそうだ。これも03年の山形以来、「いつ日本で上映されるのか」とずっと言われてきて、ようやく日本上陸だ。

一部メディアでは、この映画の中に、北朝鮮による拉致に関わるある容疑者が映っている(しかも、ほんの一瞬)ことから、話題がそちらの方にどんどん向いている。今週号の「週刊朝日」の見出しは、『あの●●●が「影の助演」』とまで書いている。

そんなところにしか、メディアは目が付けられないですかねえ。

この映画の監督を務めたキム・ドンウォンさんは、アジアプレスの野中章弘、石丸次郎(映画の中にも登場します)とも親しいが、森達也さんとも親交が深い。僕は03年の山形映画祭で、森さんや安岡卓治さんらと一緒にこの映画を会場で見ていた。いま書店に並んでいるいくつかの雑誌などで森さんと彼の対談記事などが掲載されている。http://www.jdox.com/mori_t/index.html

余談だが森さんって、出版の数もたいがい多いが、最近は映画評、書評、シンポジウム、対談などなど、あちこちで引っ張りだこ。「守備範囲」が本当に広い人だ。先日会ったときは「ちょっとこれからはトークとか減らそうと思って…」と言ってましたが、「トーク界の『みのもんた』なんですから、何をいまさら言っているんですか!」と僕が言ったら、苦笑してました。

で、その森さんに2月の中旬ごろ以下のメールを送った。これはいま政界で話題の「偽メール」じゃないですよお~(笑)。

> 「送還日記」は何とかたくさんの方に観てほしいですね。
> あの映画に日本でどれくらいの人が入るかが、
> この国に「どれくらいの未来」があるのかのリトマス試験紙になると思っております。
>

あんまり観客の数とか言うと、それこそ視聴率や売れ行きばかりを気にしているように思われるかもしれないが、映画というのは、作った側は「多くの人に見てほしい」とみんな思っている。だって、劇場や上映会に来るのは「視聴率」とか「世帯数に換算された数字」とかじゃないから。一人一人が足を運んで、ほとんどの人が自腹のお金を払って見に来てくれるわけなのだから。

この「送還日記」に関しては、あえて言う。この映画は「観客の数」の問題だ。この映画だけは「あんまりお客さんは入らなかったけどいい映画だった。観に来てくれた人はちゃんとわかっている」なんていう評価ではダメだ。映画そのものにとっての数の問題ではなく、日本の社会にとっての数の問題だ。

最初は渋谷の映画館から始まって、そして全国各地の映画館(大阪・京都など、いくつかの映画館はすでに上映が決まっているようだhttp://www.cine.co.jp/soukan/info.html)と、上映会でどこまで広がっていくのか。

最初に観た人たちが、別の誰かに伝え、そして、また一人誰かが観に来る…。ハリウッド映画みたいな「全国同時公開」はできないので、ほんとうに一人一人の「縦と横のつながり」でお客さんは増えていく。だからこそ、「最初に観る人」が重要なんだ。最初に渋谷の「封切り劇場」で観る人たちが大事な役目を負っている。実際最初の入り具合によって、各地の映画館も今後上映するか、しないか、あるいはどれくらいの期間上映するかが大きく左右される。ちなみに、いまだから少しは笑って話せますが、「Little Birds」の場合は最初のスタートダッシュではコ ケました。

韓国では大ヒットだった、この「送還日記」。日本の社会の度量の深さと未来が、この映画の観客動員数にかかっていると僕は大げさではなく思っている。

映画の中に出てくるシーンで、なぜ、キム・ドンウォン監督は「ソウル~ピョンヤン」の航空チケットを手にしたとき、泣きそうになったのか。なぜ、キム・ドンウォン監督は、02年ワールドカップサッカーでの韓国の活躍よりも、金大中と金正日の首脳会談での握手のシーンの方を選ぶのか。

その理由は、この映画を最後まで観れば自然とわかるだろう。

「ソウル~ピョンヤン」。それは「東京~大阪」「北京~上海」のような、近い、何の障害もない2つの都市を結ぶ道程になっていたはずだった。それがいまなお、近くて遠く、ときに見えなくなったり、ときに目の前におぼろげに現れたりする。二つの首都を結ぶ航空チケット。その二つの街の「距離」と「壁」と「歴史」。その間で生き抜いてきた、人生を翻弄されてきた人間たちの事実の重さ。

「ステーヴィー」もそうだが、「送還日記」も、「いつか」ではなくて、絶対に「すぐに」観てほしい。

ほかには、3月3日から「アラブ映画祭2006」が赤坂で開催される。
http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topics/movie/arab2006.html

以前このブログでも書いたが、http://blog.so-net.ne.jp/watai/archive/200509 昨年上映された「露出不足」ほか、イラクの映画最新作もいくつか上映されるので、ぜひどうぞ。

そのほか、03年山形映画祭の作品では、「熊笹の遺言」http://www.cinema-juku.com/kumazasa/newkumazasa/home1.htmが、
3月4日(土)に赤羽会館(JR赤羽駅から徒歩5分)で午後2時と5時の2回上映される。

様々な作品が目白押しで、身体がいくつあっても足りないぐらいだが、順番に一つひとつ見ていけば、一つひとついろんなことが見えてくるので、「最初に観る人」になって、それから周りのいろんな人たちに伝えていってほしい。

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綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [綿井健陽 Web Journal]
http://www1.odn.ne.jp/watai

映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
全国各地で上映中
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2006-03-02 02:08  nice!(2)  コメント(5)  トラックバック(8) 

nice! 2

コメント 5

c.b

はじめまして。
いつも貴重な情報ありがとうございます。

「リスト」に便乗してしまいますが、
綿井さんが以前の記事で触れられていた映画「ダーウィンの悪夢」が、3月5日にNHKの衛星第一で放送されるようです。
http://www.nhk.or.jp/bs/wdoc/
テレビだと、大都市周辺に住んでいなくてもみられるのでうれしいです。
by c.b (2006-03-02 05:06) 

岡まさはる

「ダーウインの悪夢」が、テレビで見れるとは!お役立ち情報です。
c、bさん情報ありがとう。綿井さんの紹介で、見たいと思っていたのですが、絶対、九州で上映する映画館はないだろうから見れないと思っていました。必見ですよね。リトルバーズとともに。'o'
by 岡まさはる (2006-03-02 21:40) 

アスタリスク

明日3月3日金曜日
NHK衛星放送 「きょうの世界」で映画『スティーヴィー』のスティーヴ・ジェイムス監督のインタビューが放映されます。BS1 金曜22:30~24:00
http://www.nhk.or.jp/kyounosekai/
by アスタリスク (2006-03-02 22:16) 

daru

いつも拝読しております。
「ダーウィンの悪夢」、同じBS1ですが再放送されるようです。
3月11日(土) 後0:10~2:00
by daru (2006-03-07 09:39) 

マサガタ

香田さんを殺害した犯人が逮捕されたそうですが、そのことについて記事を書いていただけないでしょうか。
by マサガタ (2006-03-09 20:43) 

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