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これからは「自主協力」と呼ぼう

ちょっとバタバタしているなか、以下忘れないうちに書いておこう。

これまでも何度もこのブログや以前のHPで、元共同通信の原寿雄さんの発言や記事を引用させてもらった。最初は4年ほど前の「良心的ではなく、良心の発動を」からだったと思うが、その後も折にふれ、本当にいろいろとご教示いただいている。

原さんのいまの正確な年齢は知らないが、2年ほど前に直接「失礼ですけど原さん、今年おいくつなられたんですか?」と聞いたら、「今年80歳だよ」というので、周囲の人も含めて相当驚いた記憶がある。中には「えっ、それはウソでしょ原さん。だまされないわよ」と真顔で問い直す人までいたぐらいだ。今年年賀状代わりにいただいたメールには「忙しくてボケる暇がありません」と書いてあったが、相変わらずいつも元気だ。

そんな原さんが、最近また新たな言葉を生み出した。

「メディアの中はもはや『自主規制』ではなく、『自主協力』体制になっている」

という言葉だ(「日本ジャーナリスト会議」http://www.jcj.gr.jp/の機関紙から)。

何かの集会で原さんが発言した内容で、その全文は掲載されていないので前後の文脈が不明なのだが、これはう~んなるほどと思った。

「規制」ではなくて、「協力」。

「自主規制」という言葉の方はこれまで何度も使われてきた。テレビでも新聞でも、特にマスメディア批判がされる場合、必ずといってもいいほど使われてきた単語だ。集会やシンポジウムなどでは、市民の側からこの単語が真っ先に出てくる。

テーマとしての天皇でも、戦争でも、従軍慰安婦でも、映像のモザイク処理まで、何かしらメディアの中で避けられてきたことに対して「自主規制」と言う言葉が使われてきた。

ところが、それを誰が、どうやって、どんな理由で規制しているのかが、実際のところ実体はなかったりする。森達也氏のテレビドキュメンタリー番組と単行本「放送禁止歌」は如実にその構造の一例を物語っている。

「規制」は何らかの理由や根拠がないとできない。それがないと従うのも難しいし、気が進まない。普通は罰則などもあるはずだ。だが、「協力」にはたいした理由や根拠も必要ない。ただ、「ほかの人や動きについていく」か「前例を踏襲する」かなど、自分が主体的に検討したり、誰かと議論する必要もない。協力しても罰則は直接生じない。が、もし協力しないとなると、何か別角度から「罰則」に似た動きが起こるかもしれないという、得体の知れない静かな恐さ…。

みんなで規制するのではなく、みんなで協力して、そして「何かを避ける」。「自主規制」という言葉にこれまで慣らされてきたが、「自主協力」という言葉の方がその構造をよく表している。

僕も恐らく、いや絶対にやってきたはずだ。どこかで「協力」しているはずだ。

この「自主協力」体制を拒否する方法はただ一つ。「裏切る」しかない。しかも「一人」で。みんなで「一人で協力」するのは簡単だが、「一人で裏切る」のは難しいし、ちょっと恐い。相当の勇気と覚悟がいる。そろそろ卒業式シーズンだが、「君が代」の斉唱のときなんてまさにそうだ。先生方に対して処分や停職まで待ち構えているのだから。

「裏切る」という言葉はネガティブな響きがあるが、いまの時代と社会と日本を見回すと、周囲の様々な動きに対して「協力」するよりも、「裏切る」ことを優先した方がいいことだって多々あることに気付く。今後ますます国家の側から、「協力」「要請」「通達」という名前で「強制」される場面が増えてくるだろうから。

以前も書いたが、一人が反対すると、誰か別の一人が反対するかもしれない。
何に協力して、何を裏切るべきか。

…………………………………………………
綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [綿井健陽 Web Journal]
http://www1.odn.ne.jp/watai

映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
全国ロードショー上映中
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2006-03-13 13:59  nice!(1)  コメント(1)  トラックバック(3) 

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ペンギン

関連する記事をTBさせていただきました者です。
日常茶飯、多くの場面で「自主協力」させられる、いや「している」自分を省みて自己嫌悪に陥ることも屡々ですが、ここ一番の時には周りの期待を裏切ってすっくと起ちたいと思いますね。
以前とある式場で受賞対象になった私は、すっくと起って受賞を辞退したことがありました。その式場演壇には日の丸の掲揚があったからとの理由からでした。
綿井さんの見事なお仕事ぶり、いつも敬意を持って拝見しています。
by ペンギン (2006-03-14 23:40) 

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