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「遺言」

前回書いた自衛隊の「情報保全隊」そのものは恐れることはない。むしろ笑い飛ばすか、哀れに思うか、逆に活用すれば十分だ。ただし、警戒すべきはこの周辺に派生する動きだ。この国では天皇批判でも、自衛隊批判でも、直接彼らから妨害や圧力を受けるわけではない。すべてはその周辺からやってくる。その怖さを身をもって知っている人がいる。その人が今週末の16日、東京都内で講演をする。http://www.jvja.net/fukusima%5Econtents.html

まさしく彼は「反自衛隊」活動をしている最中、暴漢に襲われた。ひょっとしたら、本当にタイトルどおりこれが「遺言」となるかもしれない。彼はその覚悟をもって望む。

▼福島菊次郎「遺言」講演会
http://www.jvja.net/fukusima%5Econtents.html
2007年6月16日(土) 開場 午後 1時30分 講演 午後2時~5時
会場 明治大学リバティタワー2F 1021番教室(東京・御茶ノ水)
(定員240名・予約は必要ありません) 資料代 1,000円 
会場地図→http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html
共催: 現代史研究会 日本ビジュアルジャーナリスト協会( JVJA)

以下、信濃毎日新聞に掲載された(07年3月5日から3回連載)フォトジャーナリスト山本宗補さんの記事から一部を引用する。

『その反骨精神を物語るエピソードの最たるものは、六〇年代後半、防衛庁広報課を欺(あざむ)いて自衛隊と兵器産業の実態を撮影し、雑誌に発表したことだろう。「国家権力を相手に、取材のモラルうんぬんを言っていたら、権力に都合のいい写真しか撮れない」と福島さんは言う。暴漢に襲われて重傷を負い、不審火で家が焼けたが、屈しなかった。
 写真集『原爆と人間の記録』を出版した七八年。テレビ番組「徹子の部屋」に出演した際には、「『天皇制批判はしないで』と釘を刺されたので、『終戦』という言葉を使ったらその場で席を立つことを約束させた」という。』(信濃毎日新聞=07年3月5日から3回連載「カメラを武器として・福島菊次郎」文・山本宗補)

ほかにも「戦争責任展」の巡回写真展を各地で行った際、右翼の妨害に遭い、発砲事件も起きた。家には、「夜道を歩くな」「そんなにこの国が嫌いなら日本から出ていけ」という名を告げない脅迫電話がかかってきたという。遠い昔の話ではない。90年代前半のことだ。

87年に朝日新聞阪神支局襲撃事件が起きたとき、高校生だった僕はその「赤報隊」の犯行声明に恐怖を感じた。「われわれはほかの心ある日本人とおなじように この日本の国土 文化 伝統を愛する。 それゆえにこの日本を否定するものを許さない」「反日分子には極刑あるのみである」「われわれは最後の一人が死ぬまで処刑活動を続ける」

しかし、今ではこの手の文面はネット上にあふれ返っている。「反日」という言葉なんて、雑誌媒体ではもう毎日のように目にする時代だ。もし僕が「赤報隊」のメンバーだったら、いまこう嘆くだろう。「知らない間に俺たちの主張は全国に浸透したよ。もう俺たちの出番はないな」

「赤報隊は失敗したのだ。」と、朝日新聞の故・鈴木規雄氏は、事件から15年目の02年5月3日付の紙面で結んだ。だが、実際にはこの20年を振り返ると、「赤報隊」思想が社会に浸透したのではなく、この国の日常空間が「赤報隊」思想に近づいていった。そして、気がつけばもう驚かなくなっている自分がいる。こうしてまた飼いならされる。

飼いならされないためにはどうしたらいいか? 16日、福島菊次郎さんからそのことを「遺言」として教わる。

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綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [綿井健陽 Web Journal]
http://www1.odn.ne.jp/watai

映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
DVD発売・各地で上映中
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2007-06-12 21:50 

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