【3月30日=続・戦火のバグダッドから その19】
今日はちょうどホテルの前で、NHKの記者・カメラマンの方と偶然会った。バグダッドで日本人の人に会うのは相当久しぶりだ。去年は誰も会っていないし、05年はバグダッドには一度も来なかったので、04年以来3年ぶりか。アジア系の顔はこの周辺ではほかに見当たらないので、やはりお互いに歩くだけでも目立つ。
さて日本では「イラク特措法」の改正法案が閣議決定された。http://www2.asahi.com/special/iraq/TKY200703300049.html このニュースは以前からイラクの地元紙でも、何度か継続的に報じられている。朝日新聞の世論調査もいくつかの新聞で引用・紹介されていた。http://www2.asahi.com/special/iraq/TKY200703140487.html それらと合わせて先日、東京・銀座であったデモの記事も載っていた。http://www2.asahi.com/special/iraq/TKY200703210229.html
これらを伝える地元紙の記事の中では、「日本の航空自衛隊員約200人はクウェートを拠点に米軍の支援活動を行っている」「日本は米国のいちばんの友好国である」「安倍首相は憲法を改正して、自衛隊の海外派遣を推し進めようとしている」などがちゃんと書かれていて、日本のことが事実として「正確に」伝えられていると思った。面白かったのは3月17日付の地元紙「アル・マダ」にこれらのことを伝える記事の最後の部分で、「しかし、日本のメディアは航空自衛隊の現地での活動内容については全く取材していない」と文末に書かれていたことだった。
これは痛いところをついている。僕もイラク南部サマワの陸上自衛隊は何度か取材したが、航空自衛隊は皆無だ。防衛庁は航空自衛隊がこれまでに米軍兵士を何度も輸送していることを認めているが、それらの映像や写真をメディアで見たことも一度もない。完全に取材シャットアウト状態が続いている。
航空自衛隊が活動しているイラク北部のアルビルやバグダッドも含め、今では民間の航空機がいくつもイラクに乗り入れている。イラク航空は毎日、ヨルダン航空はアンマン~バグダッド間を一日2便も飛んでいる。北部クルド自治区のアルビルは完全に国際空港で、ドバイ(UAE)、イスタンブール、ダマスカス、ベイルート、アンマン、さらにはなぜかオーストリアのウィーンから週に2便も定期便が飛ぶほどだ。中国系のビジネスマンもアルビルには結構来ている。イラク国内では北部のアルビル、スレイマニア、南部バスラなどの街の間を国内線の定期便がちゃんと就航している。
つまり、空港間を往復するだけの活動であれば、航空自衛隊の輸送機でなければならない理由がない。イラクへの「人道復興支援」というのだが、民間の飛行機のチャーターでも十分対応できる。「自衛隊の輸送機を使って、自衛隊員を派遣する理由」はただ一つ、それでないと日本政府として米国へ顔向けができないというだけのことだ。クウェートからイラクに向けて運んでいるものは、「米軍兵士らを運ぶ『米軍支援』のついでに、イラクへの支援物資も運んでいる」と言った方がいいだろう。
バグダッドに住むラード・アルバトゥリさん(51歳)は、「サマワで以前活動していたのは知っているが、テントの中にいるだけだったと聞いている。米軍への協力をしているので私たちの敵だ」と話していた。バグダッドでは自衛隊の具体的な活動は知らなくても、おぼろげに「米軍への協力をしている」とイメージしている人は結構多い。
最大で2年も派遣を延長するわけだが、さて航空自衛隊はこれからイラクで何をするつもりなんだろうか。
3月20日撮影=イラクの新聞・雑誌はいまも毎日たくさん発行されている。テレビも衛星放送のパラボラアンテナ・チューナーが相当行き渡っているが、実際には停電が多いので肝心なときに見れない人も数多い。したがって「ニュースは新聞で知る」という人はかなりいる。
…………………………………………………
綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [綿井健陽 Web Journal]
http://www1.odn.ne.jp/watai
映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
DVD発売・各地で上映中
…………………………………………………
日本のメディアで目にふれないもので、貴重な情報ありがとうございます。 なにかの機会に紹介させてください。
ご無事をお祈りします。
by ayu15 (2007-08-11 23:51)