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同じ道

▼週刊金曜日(8月5日発売号)掲載記事
http://www.kinyobi.co.jp/Recent
サマワ緊急現地報告「自衛隊に厳しい視線」

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朝8時台の満員電車に乗る機会はめったにないが、なぜか朝8時台のテレビ番組は起きた拍子に何気なく見入ってしまうことが多い。最近は夕方や夜のニュース番組よりも、朝の番組の方が「硬派」なテーマやトピックスを取り上げることが多々ある。

きょうはNHKの朝の番組で、イラクに行った若者たちを取り上げていた。いまは北海道にいる今井紀明さんのほか、以前僕がバグダッドで会った大学生の方も出ていた。

ちょうど彼らは高校生のときに、9・11同時多発テロ事件をテレビで見て、そしてイラク戦争が始まる前や後に、実際にイラクを訪れている。そしいまも、イラクに限らず様々な分野で活動を続けているようだ。とても頼もしい。

僕が高校生だったのころの80年代終盤は、天安門事件、ベルリンの壁崩壊、そして90年の大学入学後に湾岸戦争、ソ連崩壊、カンボジアPKO、自衛隊派遣など、日本も世界も激動の時代を迎え、大きな分岐点を通ったころだった。

そのころ、僕は大学の図書館で「ベトナム戦争」の本・写真集・映像を片っ端から見て、やはり実際にベトナムやカンボジアを訪れた。93年の大学4年生のときには就職活動もせず、再度カンボジアへ行き、あちこち回ってタケオの自衛隊駐屯地に行った。

今回のサマワ宿営地の取材は「門前払い」だったのに(!)、当時の自衛隊駐屯地は「アポなし突撃で」大学生の私にいろいろ中を見学させてくれた。とても親切な自衛隊員の対応をいまでも覚えている。

僕より15歳ぐらい年上の「先輩」たちは、大学のときに「ベトナム戦争」真っ只中で、その後、ソ連が侵攻したアフガン取材をしている人が結構多い。

そう考えると、みんな同じような道をたどっている。
何かの出来事や戦争・事件を契機に、それをメディアで見て、そして実際に自分の目で見てみようと、確かめてみようと現場を目指す。

そして現場に出れば、先輩も後輩もない。若手もベテランも、みんな横一線だ。

最後の最後まで現場で記事を書き続け、自分自身の訃報と絶筆が同じ日の新聞に掲載された作家・佐瀬稔さんは生前にこう書いている。

『〈駆け出し〉という言葉が、何より好きなオレは、いつだって「駆け出したばかり」なのだと。これから以後もそのつもりでいる。』(NUMBER 98年6月18日号から)

僕もサマワ取材の帰りに「寄ってみるか」と一時考えた、イラク南部・バスラで、米国人ジャーナリストが殺害された。そして同行のイラク人通訳も重傷だという。
http://topics.kyodo.co.jp/feature01/archives/2005/08/post_414.html

「ジャーナリスト」の死以上に、「イラク人通訳」までも巻き込まれることが、いまのイラク戦争を取材する困難さを象徴している。

最後に、先日に続き、またおわびと訂正です。

「東京での劇場上映が終了した」と書きましたが、まだ続きがありました。
渋谷・アップリンクで8月5日から毎週金曜日にレイトショー上映があります。
http://www.uplink.co.jp/x/log/000521.html

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綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [綿井健陽 Web Journal]
http://www1.odn.ne.jp/watai

映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
全国ロードショー上映中
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2005-08-04 12:09  nice!(1)  コメント(3)  トラックバック(0) 

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コメント 3

パンと植木鉢

nice!
niceして措いておかしな話だが、じゃぁ改めてジャーナリズムとは何なのだろうと考えてみると、外野にはこれが意外に解り辛い。
抜いた抜かれたの競争、あれはなんなのか?スクープといってもリークされているだけじゃないか?と傍目には虚しいことがある。他社と違う記事を書こうとして視点をずらしたつもりが穿ち過ぎたり、いつの間にか文化人になっていたりするのでエッ?と思うこともある。
結局のところ、ジャーナリズムには実際たずさわってやっている人にしかわからない麻薬のような何かがあるのかもしれないと最近思う。スポーツと同様、やってる人と見てる人の間には深い乖離があるのだろう。スクープや一番乗りには、ホームランやゴールに似た快感があるのかもしれないと考えたりもする。いづれにせよ窺い知れない。
by パンと植木鉢 (2005-08-04 15:38) 

mutsumi

この記事を読んで、マンガ作家だった頃、読者の方から時々「どうしたら漫画家になれますか?」という質問を受けたことを思い出しました。
なり方には色々な方法があるけれど、私が強く思うのは、そういう質問をしている時点でほとんどアウトだということ。
自力で調べることもせず、手っ取り早く人にハウツーを聞くという行為自体が、その仕事に向いていない証拠だと思うのです。
その世界に飛び込んでみて初めてわかることもありますし、試行錯誤するうちに自分のスタイル・目的が確立してゆくものです。
何が何でもやってやるぞという情熱・覚悟と共に、リスクや保証を気にせず自分のできることからとにかくまず始めること、行動すること。
それができない人は、ジャーナリストであれ他のフリーの仕事であれ、就くのは難しいし、就いても続かないでしょうね。

それから、駆け出しという言葉、いいですね。つくづく実感します。
初心を忘れたり思い出したり、困難を乗り越えたり挫けたりしながら、それでも自分の今現在できることを精一杯やるしかないな、と喝を入れていただいた気持ちです。
by mutsumi (2005-08-05 01:24) 

磯野さんちの猫

最近のサマワ。電気も水も不足。もう切れないほうがおかしいようだ。
いやいや、綿井氏が前から言っていたようなことが顕在化したようだ。
でも、徒党を組んで煽動に乗せられるだけの元気がある連中がいるわけですね。しかし、不平不満も言えない人達が大勢いると思います。
綿井氏の諸記事からは残念ながら、そうした人達の声がいまひとつであったのが残念だ。自衛隊を引き揚げ~ろしか、心に残らない。現地に行ったいただけに残念だ。
by 磯野さんちの猫 (2005-08-09 22:41) 

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