久しぶりに【３月１４日＝バグダッド発 その１】
パレスチナホテル３階から見える、以前フセイン像があったフィルドス広場周辺（３月１４日撮影）
「ふ～っ」。
３月１４日（火）、バグダッド到着。ため息ひとつ、またひとつ。
３月８日（水)に日本を離れて一週間、予定外の移動を何度も繰り返してようやく「目的地」に到着した。
イラク自体も昨年7月のサマワ以来、バグダッドに入るのは０４年７月の主権移譲以来だから、もう１年半以上のごぶさただ。
ずっと入ろうと思っては断念したり、昨年12月には入国しようとした寸前で「ビザ取り消し」事件（詳細は昨年１２月６日のブログを参照）が起きたので、ここにたどり着くまでは本当に長かった。
イラク戦争が始まる１０日前の03年３月11日に初めて入ったイラクだったが、そのとき宿泊したホテルがあの「パレスチナホテル」だった。今回はそのときと同じ８階の部屋で、窓も同じ方向。
旧大統領宮殿が見渡せる窓からの景色は一見当時と何も変わらないようで、いまは米軍ブラックホーク・ヘリコプターがホテルの上空までも、何度も低空で通過する。
市内はあちこちで検問と道路封鎖。
救急車の音は遠くから何度も聞こえてくるが、爆音や銃声はほとんど聞こえてこない。
夜になると停電で以前と同じく大型発電機の音が周囲で鳴り響くなか、またまた米軍ヘリの爆音がそれをかき消すように続く。
こちらで驚いたのは、普段使っているボーダフォンの携帯電話がそのままバグダッド市内でローミングでつながる。ホテルの部屋はうちの自宅よりもスピードが早いＬＡＮ回線が入っている。なんだか東横インあたりの日本のビジネスホテルみたいな奇妙な空間だ。
さて、最初のため息の続きで、問題はここからだ。果たして外に出て「直接現場取材」などできるのだろうか。どこかの場所や、誰かの家を訪ねることはできるのだろうか。
正直に言うが限りなく「不可能」に近いと思う。 さすがにもう前回までの取材の「感覚」「予測」「対処」などは通用しない。バグダッドは「同じようで、違う街」になっている。
武器に守られた護衛なしでの外出は難しいだろう。ましてやこれまでずっと一緒だったイラク人通訳と一緒に行動すると、確実に彼らの身が危ない状況に陥る。
来週には「イラク戦争から３年」の連続原稿をある媒体で書くことになっているが、今回はいろんな意味で相当厳しいぞ。
バグダッドに入ったものの、バグダッドはより遠くに感じる。
しかし、何とか自分の「肌感覚」でいまのバグダッドをとらえてみたい。それが最も重要なことだ。
「Little Birds」の登場人物たちとも１年半ぶりに再会したいと考えている（ちなみに、あのアリ・サクバン家族はなんとか元気であることを確認した）
いくつかの媒体で原稿掲載やリポートもしますが、このブログもできるだけ更新しますのでよろしく。
では、気をつけて。じゃなくて、「十分気をつけます」。
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綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [綿井健陽 Web Journal]
http://www1.odn.ne.jp/watai
映画「Little Birds～イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
全国ロードショー上映中
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そろそろじゃないかと思っていました。今日、年度最後の授業終了日で、録画した「ようこそ課外授業・ビデオジャーナリスト綿井編」を見せて、授業のまとめにした。近現代史を勉強してきて、日本の戦争の被害（原爆）と加害を学んだ生徒達。そして生まれた平和憲法。この平和憲法により、直接的には、60年間、日本の軍隊が直接他の国の人を殺さなかったことが、崩れようとしていることを、生徒達は、綿井さんのことを通じて実感していた。
「今、イラクで何が起こっているのか知りたい」と感想を述べる子が多数いた。「この番組を通して、イラク戦争のことを改めて考え直した。」こうも書いていた。「綿井さんは、戦場でたくさんつらいことを見てきているに違いない。自分も事実をしっかり受け止めたい。綿井さんには、命をたいせつにしてもらいたいです。」「リトル・バーズも見ようと思います」（宣伝しました。もうすぐ、レンタルもできることだし。）
どうぞ、無事に戻ってきて下さい。そして、イラクは、護衛無しでは取材もできないほどの、とても危険な状況であることをしっかり私たちに伝えてください。人を殺さずにすむ状況が、何といっても幸せなことなのですから。綿井さんもがんばっているし、私もがんばりますよ。
by 岡まさはる (2006-03-15 23:09)