【3月27日=続・戦火のバグダッドから その16】
ちょうど去年の今ごろはバグダッドの街中で米軍の姿が目立たなくなった時期だった。どちらかというとイラク軍と警察の車両が頻繁に行き来していた。ところが、今年はイラク軍と米軍による合同掃討作戦を展開していることもあって、米軍車両が頻繁に街を巡回している。
米軍車両が路上を走ると、その前後100メートルはほかの車は近寄らない。したがって、米軍車両の車列が通りかかると異様にその部分だけがものものしく緊張して浮かび上がって見える。それに比べるとイラク軍・警察の車両は、猛スピードでサイレンを鳴らしながら走っていることが多いが、普通車両を改造したいびつな形が多いので何とも貧弱だ。
検問所も街にあちこちあるが、検問所の手前では車はスローダウンしなければならない。車爆弾攻撃を警戒しているからだ。いま街中で最も危険な場所はこの路上の検問所だろう。そこにいるのはほとんどがイラク人兵士か警察官。米兵はまずいない。結局、「最も危険な場所」はいつもイラク人が担わされる。しかし、もし米兵が検問所に立っていれば「もっと危険な場所」になるともいえる。
さあ、もしあなたならばどちらの方を選択するか。しかし、実際のイラク市民はそのどちらも選択権はなく、ただ目の前で起きることに従うしかない。
こちらでの取材も大詰めを迎えて、いま原稿を三つ書いている。去年もこの原稿を三つ書くのに苦しんだ。時間がかかった。今年も同じだ。
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綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [綿井健陽 Web Journal]
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映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
DVD発売・各地で上映中
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