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「運命共同体」、「出撃拠点」、香田証生さん

この2週間ほど全国各地を回って、飛行機・新幹線の移動を繰り返し、ビジネスホテルをほとんど毎日転々とした。ホントに移動ばっかりだったが、今週はようやく一息つけそうだ。そんな間に、いろんな物事が「着々と」進められている。

横須賀に原子力空母配備(28日)
http://www.asahi.com/politics/update/1028/003.html
自民党、新憲法草案発表(29日)
在日米軍再編中間報告(30日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051029-00000095-mai-pol
小泉内閣改造(31日)

横須賀の記事では、東京新聞(10月30日付)が見出しに「出撃拠点列島に」と書いてあるが、この国は空母だけじゃなく、本当に日本列島がすっぽり「米軍・自衛隊共同基地」になっていくようだ。その記事を書いた東京新聞の防衛庁担当のエキスパート・半田滋記者は、文末を「日本と米国が名実ともに゛運命共同体゛となる日は近づいている」と締めくくっている。

「運命共同体」か。

この言葉で真っ先に思い出すのは中曽根元首相だ。83年に当時の中曽根首相がアメリカで言った言葉が「日米は運命共同体」だった。僕は中学一年生だったが、なぜかよく覚えている。
http://club21.cool.ne.jp/history/58.html
で、そのとき同じく「日本列島は浮沈空母」とも言った。

なるほど、あれから22年経ってわかったが、「不沈空母」じゃなくて、「原子力空母」のことだったのか。

で、もうすぐブッシュ大統領が来日する予定(11月中旬)だ。83年当時も中曽根・レーガンは「ロン・ヤス」関係と言われたが、いまは「ブッシュ・小泉」で同じような関係か。http://www.sankei.co.jp/pr/visualservice/3/1983.html

上の写真を産経新聞みたいに「合成」して、顔だけを入れ替えてましょう(お~い産経新聞、「朝日新聞叩き」やってる場合じゃないよ)http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051031-00000121-kyodo-soci 写真説明は「月とランデブー」ならぬ、「いつもアメリカとランデブー破滅」。

昨年の10月31日はイラクで香田証生さんの遺体が発見された日だ。明日11月1日は「自衛隊記念日」だという。昨年HPで以下のようなことを書いた。
http://www1.odn.ne.jp/watai/041101.htm

彼は星条旗の上で首を切断されて殺害された。何だかいまの日本が進んでいる方向そのものをまさしく暗示している。この国は「星条旗の下で守られている」というより、むしろ「星条旗の上に目隠しされて座らされている」状態じゃないのか。だから、香田証生さんはまさしくその「犠牲」となった。

「運命共同体」という言葉は、去年自衛隊のサマワ宿営地でも聞いた。
http://www1.odn.ne.jp/watai/040824.htm

イラク戦争でまさしく日本は「出撃拠点」だったわけだが、今後はより一層「出撃拠点列島」となる。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-03-21/02_02.html
http://www.okinawatimes.co.jp/spe/heri_itu20040901.html

みんなで一緒にアメリカさんと、その前方から後方まで支援する「自衛隊」と心中するんですね、この国は。でも、僕は嫌なので、何度でも「NO」と言う。

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綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [綿井健陽 Web Journal]
http://www1.odn.ne.jp/watai

映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
全国ロードショー上映中
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直近のお知らせなど、いくつか

▼最新の映画上映予定
http://www.littlebirds.net/gekijo/gekijo.html

※大分と岡山の映画館で、11月5日から1週間上映されます。中国・九州地区の皆様、ぜひご覧下さい。

▼立教大学・人権センター主催
「 リトルバーズ 戦火のバグダッドからの問いかけ 」
http://www.rikkyo.ne.jp/grp/jinken/event/2005.html#01

日時 2005年10月25日(火)午後5時~8時
会場 立教大学 池袋キャンパス・太刀川記念館3階 多目的ホール
http://www.rikkyo.ne.jp/grp/kohoka/campusnavi/ikebukuro/index.html

内容
1.午後5時~映画上映:『Little Birds-イラク 戦火の家族たち-』(102分)

午後7時ごろ~
2.対 談:綿井 健陽
      服部 孝章(立教大人権センター長・社会学部教授)

対象  学生・教職員・一般
入場無料(事前申込みの必要はありません。どなたでもご自由に参加ください。

問合せ先 立教大・人権センター (池袋キャンパス 7号館2階)
TEL 03-3985-3192

▼ロシア人ジャーナリスト、アンドレイ・バビーツキ記者が来日!
http://chechennews.org/event/index.htm#20051027

プーチン政権から目の敵にされながら、無差別爆撃下のチェチェンの悲惨な実態を報道しつづけたバビーツキさんがお話されます。お見逃しなく。

日時:10月27日(木) 18時から21時まで
会場:東京・文京区民センター3A会議室(300人収容)http://www.city.bunkyo.lg.jp/shisetsu/kumincenter/
都営三田線/大江戸線・春日駅 東京メトロ南北線/丸の内線・後楽園駅 A2出口すぐ

参加費:1200円 留学生・難民 600円 事前申し込み不要です

1994年から断続的に続くチェチェン戦争。私たち「チェチェン連絡会議」は、この戦争による、チェチェン市民に対する人権侵害を広く知らせるために、アンドレイ・バビーツキ記者を日本に招聘し、チェチェンと、プーチン政権の現状について報告します。

 バビーツキ記者は、99年の第二次チェチェン戦争が始まって以来、厳重に封鎖されたチェチェンに潜入し、ラジオを通じてレポートしてきました。その活動に業を煮やしたロシア政府は、2000年の2月に彼を拘束、「非合法武装勢力の一員だ」として、チェチェン人たちに引き渡す場面を仕組んで放送させました。「バビーツキ事件」です。 チェチェン内部に入り込む現場主義とプーチン政権に対する問題意識。今、混迷するチェチェン情勢を語るのにふさわしい人物と言えるでしょう。ぜひご参加ください!

アンドレイ・バビーツキ:1964年モスクワ生まれ。国立モスクワ大学で言語学を専攻。ペレストロイカ期に人権活動に加わり、87ー89年に「グラスノスチ財団」機関紙の編集員を務める。89年に米国系放送局「ラジオ・リバティー」記者となり、93年の「ホワイトハウス砲撃事件」なども取材。第一次チェチェン戦争では、特派員として、無差別爆撃の続くチェチェンから直接レポート。首都グロズヌイ陥落後も取材を続けた、ただ一人の記者。最近、チェチェンの最強硬派野戦司令官バサーエフのインタビューを敢行するなど、活躍は現在も続いており、ロシア政府から激しい圧力を受けている。

主催:チェチェン連絡会議
連絡先:チェチェンニュース編集室
146-0082 東京都大田区池上6-30-17 電話+ファックス:050-3329-3951
メール:ootomi@chechennews.org サイト:http://chechennews.org/

▼イラク医療支援の現実
http://www.jim-net.net/notice/notice051028.html

今年2月から隣国ヨルダンのアンマンで、JIM-NET現地事務所を拠点に、イラクの医師たちと医療支援調整を行ってきた井下俊医師がこのたび帰国。これまでの活動と今後の支援についてお話をうかがいます。また、2002年からヨルダンでイラク難民をみまもり続けた吉野都看護師を特別ゲストに迎え、今イラク難民に何が起きているのか、最新の情報を報告していただきます。

■ 10月28日(金) 午後7時(6時半開場)
■ カタログハウス地下2階セミナーホール
http://www.jim-net.net/notice/catalog_house_map.htm
■ 参加費 : 500円
ご予約・お問い合わせはJIM-NET事務局へ 0263-46-4218 / info-jim@jim-net.net

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綿井健陽 WATAI Takeharu
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映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
全国ロードショー上映中
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『がんばれニッポン!破滅への改革を止めるな』

さていま高松に来ているが、今日(21日)から月末(30日)まで、また全国各地を一気に訪れる。
高松→鹿児島→福岡→東京(立教大)→三重→仙台→東京(東大)→大阪→京都という予定。
一部、映画上映以外の関係もあるが、場所・時間の詳細は以下のHPをご覧下さい。
http://www.littlebirds.net/gekijo/gekijo.html

4月の封切り以来の半年間で、動員はおよそ1万5000~6000人ぐらい、上映箇所は全国で60~70ぐらいというところ。年末までには100に到達するかな。最近はもう来年2006年1~2月の上映依頼がいくつか届き、1月の週末はほぼ埋まっている。

でも、「亡国のイージス」は観客動員150万人突破だそうから、その100分の一ぐらいという規模だ。ほかの様々映画も含めて、いまの政治と同じで「数の論理」では到底及ばない。

10月にもなると、テレビも新聞もそろそろ年末や新年企画の準備に入る。
先日はあるテレビ局から「来年2006年はどんな年になるか予想してください」
という依頼があったので、僕はこう答えた。

「2006年は、『がんばれニッポン!破滅への改革を止めるな』年」

来年前半は冬の五輪と、サッカー・ワールド杯もあるので「がんばれニッポン!」のワンフレーズばかりがあちこちで連呼されるのだろう。それに浮かれている間の通常国会で様々な法案が強硬可決されていくに違いない。

例の「共謀罪」はどうやら今国会の成立は免れたが、継続審議なので次の国会では危ないぞ。
http://tochoho.jca.apc.org/nkyz.html

先日渋谷を歩いていたら、町内会の掲示板に「この街はみんなで見ている街」というポスターがあった。思わず立ち止まって読むと、防犯を呼びかける告知なのだが、とてもそうは受け取れない。
最近うちの家の周辺でも、前カゴに「パトロール中」という紙が貼ってある自転車に乗った女性と何人かすれ違った。決して警察官の自転車じゃない。

監視のベクトルが逆だよ。
街中に監視カメラを増やすよりも、いまの日本の政治の方がよほ危ないのでちゃんと監視しなければならない。

先日、小泉首相が靖国神社に参拝したが、
毎年1回参拝していることを考えれば来年9月の任期切れ直前、
ついに「8月15日強硬参拝」したって不思議ではない。

首相が参拝して、翌日に「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」の政治家たち101人(あんたらが本当の『小泉チルドレン』です)が参拝した。で、新聞の世論調査を見ると半分からちょっと超えるぐらいは「参拝支持」。

この国は「みんなで小泉チルドレン」にどんどんなって、明るく元気に「破滅への改革」の道を歩んでいるようだ。

しかし、そんな道を少なくとも僕は「みんなで」歩きたくない、一緒に死にたくはない。
ポケットからの小銭で「追悼」「感謝」「哀悼」「尊い犠牲」とされるより、ダラダラ生きていく方を選ぶ。奴らにだけは殺されたくない。

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綿井健陽 WATAI Takeharu
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映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
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「ダーウィンの悪夢」上映会(10月14日・金)東京外国語大

昨日、ちょうど山形から戻って東京に着いたころに、今年の受賞作品が発表されていた。
http://www.city.yamagata.yamagata.jp/yidff/2005/2005.html#award

期間中会場で何本もの作品を見た人たちは、今年はだいたい同じような反応で、「ダーウィンの悪夢」(公式HP→http://www.hubertsauper.com/)が大賞だろうと僕も思っていたが、予想とはちょっと違う結果だった。

さて、さっそく東京でその「ダーウィンの悪夢」上映会・監督のトークが開催される。
急な告知で申し訳ないですが、以下参照。
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《グローバル化と奈落の夢》
● 映画『ダーウィンの悪夢』上映会+討論
日時:2005.10.14(金) 16:45-20:00
会場:東京外国語大学 研究講義棟2F 226教室(府中キャンパス)
地図→http://www.tufs.ac.jp/common/is/university/access_map.html

※入場無料 予約不要 同時通訳(日本語。・英語)あり

16:30    開場
16:45-   イントロダクション
17:00-18:55 映画『Darwin's Nightmare』上映
19:05-20:00 討論 H.Sauper(監督)
西谷 修(東京外国語大学)
中山智香子(同)

主催:21世紀COE史資料ハブ地域文化研究拠点 21世紀地域文化研究班
企画実行:東京外国語大学大学院国際協力講座(Global Studies 企画 No.1)

『Darwin's Nightmare』概要紹介
生態系の宝庫で「ダーウィンの箱庭」と呼ばれたビクトリア湖、そこに巨大な肉食魚が放たれたことから状況は一変、この魚を加工輸出する工場ができ、あたりの住民の生活は崩壊する。アルコールに浸る男たち、広がる売春とエイズ、粗悪なドラッグによって道に眠る子どもたち。魚を運ぶロシアの輸送機、往路には武器を運んでくるのか…。工場の国際競争力を称賛するEUのミッション。なすすべもないタンザニア政府…グローバリゼーションの奈落を深海の悪夢のように描くドキュメンタリー。(公式HP→http://www.hubertsauper.com/

問合わせ:東京外国語大学大学院共同研究室(担当:菅崎)
東京都府中市朝日町3-11-1
TEL/FAX 042-330-5439
Email : daigakuin-kyodo@tufs.ac.jp
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「山形国際ドキュメンタリー映画祭」で受賞した作品であっても、日本の映画館でロードショー上映される作品というのは本当にごくわずかしかない。前回(03年)の受賞作品の中では、僕の知る限りこれまでわずかに一つだけだ。なので、この「ダーウィンの悪夢」もそうそう見れる機会はないと思われる。この機会お見逃しなく。

ちょうど、同じく受賞作品「ルート181」も東京で上映されているので合わせてどうぞ。
http://www.zenya.org/route181/event.html

今年の山形は「在日」特集の上映が評判で、連日たくさんの人が来ていた。
http://www.city.yamagata.yamagata.jp/yidff/2005/program/05p3.html

山形はコンペ部門よりも、こうした特集上映の方に結構「発見」があって、いろんな意味で楽しめる。受賞作品の単発での上映会は、東京・大阪あたりではまた企画されるが、今年はむしろこの「在日」特集を何とかまた別の機会に上映してくれることを願っている。

今年の期間中は特に、日本の20代の若手映画監督の作品を見たり、話をして、僕もとても刺激を受けた。みんな「新しい表現・手法・視点」をどんどん考えて、自分らしい映画作品を創り出そうとしている。そのいくつかの作品の上映会はまた僕も企画したいと思うので、お楽しみに。

映画に限らず、どんな現場でも若手もベテランも基本的には関係ない。若手は若手で、「このジジイ、そろそろ引退しろよ」と闘志を燃やし、ベテランはベテランで「まだまだ甘いわ、この若造め」と意地を見せる。そうやって裾野も広がり、頂点も高くなっていく。

30代の僕も一応年齢では「若手」の方に入ると思うけど、実際にはすぐ下の20代からどんどんユニークな作品が生まれ、上は上でまた大御所がドンと控えている状況。映像に限らず、写真も活字も、スポーツの世界でも、どこも基本的に同じです。

さて、僕もそろそろ「次」の準備の季節。

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綿井健陽 WATAI Takeharu
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映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
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「山形国際ドキュメンタリー映画祭」

▼月刊「創」11月号 (10月6日発売)
http://www.tsukuru.co.jp/
座談会「メディアが取材できないサマワの自衛隊」宮嶋茂樹×原田浩司×綿井健陽
※例によっていつもの面子でサマワ取材の「裏話」などなど。

▼山形国際ドキュメンタリー映画祭2005
http://www.city.yamagata.yamagata.jp/yidff/2005/program/05p7.html
「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
10月11日(火)上映時間:20:00~(上映後にトーク)
会 場 :ミューズ1 Muse 1
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さて、もう映画祭は始まっているのだが、僕も今日(9日)から山形に向かう。3泊4日ぐらいまではできそうだが、最終日(13日)まで残れるかどうかはわからない。http://www.city.yamagata.yamagata.jp/yidff/2005/2005.html

一般公開ではないが、期間中に「英語版」の上映が、海外の映画祭・配給会社の担当者向けにある。これも重要な場。最近またいくつか海外の映画祭から出品の打診や問い合わせが来ているので、今回も次につなげたい。

何人かの方から「今年の山形でお薦めの作品はどれですか?」と聞かれたが、初めて見る作品ばかりなので、正直よくわからない。むしろ、僕のほうが聞きたいぐらいなので、いま山形にいる方は期間中にこのブログのコメント欄にでも書き込んでもらえると助かります。

前回(03年)もそうだったが、会期中は「競馬の予想」にも似た光景があちこちの会場で朝から晩まで見られる。同じ時間帯でいろんな作品の上映をしているから、どれを見るか自分で決めるのだが、当然「当たり」もあれば「外れ」もある。みんな「口コミ」を結構当てにしながらも、自分で見る作品をいろいろ迷う時間もまた楽しいし、見終わってから「めちゃくちゃ良かった」「いや、全然面白くなかった」と激論が延々と夜中まで続いたりもする。山形では期間中、誰もが「ドキュメンタリー映画評論家」だ。

とりあえず「Little Birds」 はコンペティション部門での上映ではないので、僕は気楽に世界の映像作品をゆっくり見たいと思っているが、いまの「日本の世の中の状況」を見渡せば、そんなにゆっくりと浸ることはできないかもしれない。

と、ここまで書いたら、パキスタンの地震が「大地震」になっている。

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綿井健陽 WATAI Takeharu
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映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
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サマワの人たちに今後の自衛隊をどう説明すべきか?

映画上映に関わる催しで訪れたある街で、50~60人程度集まる「上映前夜祭イベント」があったので、そこの来場者にアンケートを取ってみた。主に映画上映に関わる実行委員会のメンバーたちを中心に、ほかにも会社員から大学生、主婦の方まで幅広くいたと思う。

僕がたまに原稿を書いたりする雑誌を、どれくらいの人が読んでいるのかということを聞いてみた。

「週刊金曜日」を毎週読んでいる人→3、4人ぐらい
「DAYS JAPAN」を毎月読んでいる人→5、6人ぐらい
「世界」を毎月読んでいる人→1人

「世界」の場合は毎月ではなく、「たまに読む」という女性だった。「金曜日」よりも、「DAYS」の方が多いというのは意外。それを「DAYS」編集部の人たちに話したら、やはり同じく驚いて、喜んでいた。

ならば、先月僕が「世界」10月号に書いた原稿「サマワ現地報告」を読んでいる人は全国で相当少ないということだな。http://www.iwanami.co.jp/sekai/2005/10/directory.html 来週あたりには来月(11月)号が書店に並ぶから、今週中であればまだ本屋にあるはずなので、読んでください。

さて、先週あたりからようやく新聞各紙が、サマワ自衛隊派遣に関わる記事を掲載している。
http://www2.asahi.com/special/iraq/TKY200509290320.html
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20050929it02.htm
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051003-00000006-san-pol

それらによると、どうやらサマワの自衛隊は「派遣延長、来年前半で撤収」という動きで進められているようだ。こうして何の論議・議論・検証もされずに「自然に」自衛隊の動きが決められていく。
議論を呼び起こしたくても、メディアの側にその情報・材料がないのが致命的だ。僕らのようなフリーランスがたまにサマワを取材したぐらいでは、世の中に流通する情報の「絶対量」として絶対に足りない。防衛庁のHPだけを見ていると、自衛隊がイラクで「大活躍」して、地元の人たちからも「評価」されているように見えるものなあ。http://www.jda.go.jp/jgsdf/iraq/iraq_index.html

僕が7月に取材したサマワでは、実際のところ、自衛隊が現地で置かれている立場というのは微妙なものだ。東京新聞(9月7日付掲載)から受けたインタビューで僕は最後にこう答えた。「このまま駐留を続けても『何をしてるんだ』と言われるし、引き揚げたら引き揚げたで「何もせずに帰っていった自衛隊』と言われるでしょう。『去るも地獄、残るも地獄』かもしれません」

昨年12月の時点でも、僕のHPに以下のような記事を書いた。
http://www1.odn.ne.jp/watai/041216.htm

去年までと、今年の7月では、サマワの人たちの自衛隊への捉え方もかなり変化があり、そうした変化を現場の自衛隊はもちろん、防衛庁や首相官邸サイドがどれだけちゃんと認識しているのかが、非常に心配だ。何せこれまで「サマワの子どもたちが自衛隊員に手を振ってくれること」が、自衛隊への「評価基準」なのだから、これは非常に恐ろしい「シビリアン・コントロール」だ。http://www.jda.go.jp/j/kisha/2004/12/07.pdf

一言で言うと、いまのサマワだけでなく、イラクに外国の「軍隊組織」が駐留し続けて、何らかの活動を行うのはもはや「限界」だと思う。最初の派遣そのものから無理があったが、その無理が積み重なって今日に至っている。で、そろそろサマワの人たちにもちゃんと「自衛隊がやること」ではなくて、「自衛隊ができないこと」の説明をしなければならないと思うのですが。たとえば…

「サマワの皆さん、我々自衛隊は今回は駐留を延長する方向ですが、来年のどこかで撤退する予定です。さらに言いますと、現時点では皆さんがずっと期待してきた『日本の企業』がここに来る予定はありません。いまのイラクの治安情勢を見れば恐らく無理だと思います。電気の発電所は07年完成予定で新しいものを作る予定ですが、これも工事をちゃんと進められるかどうか未定です。我々自衛隊員が直接建設することはできません。そもそもこの自衛隊派遣は日本の憲法に照らし合わせて無理がありました。また、これ以上英国・豪軍も含め、『軍隊組織』がサマワに駐留すると余計に皆さんの町の治安を乱す恐れがあります。皆さんの期待のすべてに応えることができなくて申し訳ありませんが、でもこれからも何とか日本はサマワやイラクの皆さんにできることをします。実際、いくつかの日本のNGOはいまもイラクに医療支援を続けています。ですから、今後の支援の中心は、まずイラクの周辺国を拠点にした民間レベル、NGOの人たちの力によるものになります。非軍事に限った日本らしい支援を続けるつもりです。何とかご理解下さい」

早めにこうした説明をしとかないと、日本での「自衛隊撤収計画」報道がサマワにも当然届いて、また変な噂やデマが街に広まる恐れがある。

それから、サマワでの自衛隊の活動に対して、「自衛隊は相変わらず引きこもっているんですか?」
と言う人が僕の周りでも結構いるが、その言い方は事実と異なる。「引きこもり」という言葉をサマワの自衛隊に対して使うべきではない。

ただし、僕は今年7月に取材したときにはこういう表現は原稿などで使った。「実質的に宿営地以外での活動はほとんどしていない」「宿営地外にはたまに一部の隊員が指導・監督目的で『外出』はしますけど、それが自衛隊の『人道復興支援活動』とは言いがたい」「実際数でいちばん多い『外出』は、宿営地から車で15分ほどの距離にある英国・豪軍キャンプに行くことです」

自衛隊から送られる活動報告を集計してみると、今年8月は一ヶ月間で「建物・道路補修の指導・監督で12日」外に出た。だから3日に一回ぐらいのペースで宿営地外には出ている。先月9月も同じ12日だった。指導・監督というのは「補修作業がちゃんと行われているのかの確認をする」ということで、それを一日にかろうじて一、二箇所回るだけだ(9月には一度だけ、一日五箇所を回った日がある)。ほかに同じくたまに「医療指導」というのもしているが、それらをするために600人もの隊員が宿営地を維持して駐留するという現状。

給水ももう終了したわけだし、サマワで、もはや自衛隊でなければ出来ない活動はないに等しい。だんだんとサマワに「自衛隊が駐留すること」が手段ではなく、そこにいることが目的となってきた。

いずれにせよ、「引き際」「去り方」「地元への説明」をしくじると、今後日本がイラクに関わる本当の「人道復興支援」さえも難しい状況に追い込まれ、取り返しがつかなくなる。それは自衛隊隊員の問題ではなく、彼らを送り込む政治の側、シビリアンの判断・決断・説明の問題だ。

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綿井健陽 WATAI Takeharu
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映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
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