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「見ておいた方が、知っておいた方がいいリスト」その1

僕の個人HP http://www1.odn.ne.jp/watai/ を久しぶりに更新しました。
特に使い分けているわけではなく、こちらのブログと重なる部分もありますが、主に僕が関連するものの「お知らせ」「告知」用にこれからもたまに更新しますので、合わせて見てください。

きょう(31日)から、なんとか韓国のEBSドキュメンタリー映画祭 http://www.eidf.org/2005_fall/eng_temp/main_01.html に行ける事になった。しかし、最悪で1泊2日戻りの可能性もあり、なんとも慌しい滞在になりそうだ。

で、前回の続きというか、このブログ経由で何かと出会う「きっかけ」になるように、「見ておいた方が、知っておいた方がいいリスト」を始めます。これから生きていくうえで、やはり「見ておいた方が、知っておいた方がいい」ことが世の中にたくさんあると思いますので、それらをできるだけご紹介します。

テレビ・本から、映画・講演・イベントにいたるまで、僕が知った、見つけた範囲でご紹介します。僕の「独断と偏見」で、ごくごくたまに、唐突にやります。「なぜこれを紹介しないんだ?掲載しろ!」と言われても困りますのでご容赦ください。

ですが、先日あるイベントの会場で主催者の方から「このブログ経由のアクセス数が一番多かったんですよ」と言われてうれしかったです。それなりの広告・告知媒体として、少しぐらいは効果あるようなので、「コメント欄」などをご活用ください。

さて、まず直近でいくと、「ライファーズ」http://www.cain-j.org/Lifers/contents.html かな。9月3日・4日が最終日で、渋谷のアップリンクで上映される。監督の坂上香さんとは、先日も「日本映画監督教会」HPhttp://www.dgj.or.jp/の座談会企画(掲載は来月あたりの予定)でお会いした。

坂上さんは、森達也、是枝裕和さんと同じくテレビドキュメンタリー・ディレクター出身だ。映画監督は劇映画の世界でも、実はテレビ出身の人はとても多い。テレビ→映画は数多いが、映画→テレビはほとんどいない。だから、テレビドキュメンタリーの作り手がどんどん少なくなる。

この「ライファーズ」を見れば、ライファーズ(終身刑受刑者)の姿と刑務所の中が、「何か、誰か」とそれほど違わないことに気づくだろう。「何か、誰か」は、じっと映像を見ていれば自然に気づいて、そして結局「自分」にたどりつく。

同じく3日(土)は、待望の再放送。NHKスペシャル「沖縄 よみがえる戦場」が放送される。http://www.nhk.or.jp/special/schedule.html
沖縄の地元メディアは「琉球新報」「沖縄タイムス」がその双璧だが、この番組を作ったディレクターはまだ20代後半というからスゴイ。

「つくる会」の人たちや、その「周辺」、その教科書の採択を決めた教育委員の皆さんは、特にちゃんと見ておくように。「新しい歴史」を勝手に「つくる」前に、ちゃんと知っておきましょう。

次はちょっと先の話だが、9月24日(土)夜は、東京・渋谷でアジア記者クラブ主催「沖縄密約33年目の証言」。元毎日新聞記者の西山太吉さんが講演をされる。
http://apc.cup.com/index.html?no=14.1.0.0.21.0.0.0.0.0.

先日、朝日新聞・長野総局の同じ姓の記者が虚偽の記事を書いて解雇されたが、それとは比べ物にならない。「沖縄返還密約事件」は、いまこそ問い直さなければならない、日本の報道・ジャーナリズム史上、そしていまのメディア状況につながる極めて重大な分岐点事件だった。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E5%B1%B1%E4%BA%8B%E4%BB%B6#.E4.BA.8B.E4.BB.B6.E3.81.AE.E7.B5.8C.E9.81.8E

来年から新聞記者になる大学生の皆さん、あるいはジャーナリスト・新聞記者志望の方は、絶対にこの機会を逃してはいけない。たぶん、「何の事件なのか知らない」人がほとんどだと思う。しかし、この機会に絶対に覚えておかねばならないことだ。東京周辺在住以外の人も、何とかこの機会を逃さないように。僕も必ず会場にいる。この事件をずっと取材している土江真樹子ディレクターも当日会場に来られる予定。

この「沖縄返還密約事件」に関しては、またの機会に詳しく触れたい。

後はいよいよ「山形国際ドキュメンタリー映画祭」。皆さん、10月7日~13日の予定はちゃんと空けていますか?その開催前に、ちょうど「予習」が出来る機会が東京であります。
http://www.athenee.net/culturalcenter/schedule/2005_09/yamagata05.html

どれもこの機会を逃すと見れない作品ばかり。

人生の時間は、みんな等しくそれほど「残されていない」。
本当にいくらあっても時間は足りないが、「見ておいた方が、知っておいた方がいい」ことは、世の中のあちこちに散らばっている。

ほかにもいろいろ紹介したいのだけど、続きはまた今度。

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綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [綿井健陽 Web Journal]
http://www1.odn.ne.jp/watai

映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
全国ロードショー上映中
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「メディア・ミックス」

本当はきょう(29日)から、韓国の「EBSドキュメンタリー映画祭」に行っているはずだった。
http://www.eidf.org/2005_fall/eng_temp/program_02.html

ところが、サマワの映像リポートを「報道ステーション」(テレビ朝日系列)でようやく放送することになり、その編集作業とやりとりのために、韓国行きを延期した。

放送は来週の9月5日(月)あたりが有力ですが、まだ流動的で確定していません。今週中のどこかで、なんとか韓国にも参ります。31日(水)に韓国・ソウルで上映されます。

さて、先週は映画上映で、大阪・山口に行ってきた。
山口では、昨年5月にイラクで殺害された小川功太郎さんの母堂にお会いした。昨年、都内で開かれた橋田さん、小川さんのお別れ会でお会いして以来になるので一年ぶりだった。
以前のHPから→http://www1.odn.ne.jp/watai/040530.htm

映画の上映会場の控室でお会いしたが、話はあまり弾まなかった。
あれから一年が過ぎて、事件当時よりも、いまの方がイラクのニュースや映像を見るのがつらいとおっしゃっていた。無理もない。その日は結局上映前に会場を後にされたが、「いつか必ず見ます」とおっしゃってくれて、僕も「いつか必ず見てください」と同じように答えた。

2年半のイラク戦争での記者たちの死者は、ベトナム戦争の20年間の数を超えたという。
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=IBR&PG=STORY&NGID=intl&NWID=2005082901000767

そのうちの66パーセントがイラク人だった。日本人もパーセント割合でいくと、米国の次で3パーセントを占める。
http://www.rsf.org/IMG/pdf/Etude_Irak_Eng_PDF.pdf

そしてまた28日、イラク人のテレビクルーが米軍に銃撃され殺害された。
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=IBR&PG=STORY&NGID=intl&NWID=2005082901000556

「イラクで亡くなったジャーナリストやカメラマンの背後には、彼らが伝えようとした無数の人間たちの死が累々と横たわっている。死者たちは訴える手段をもたない」(「フォトジャーナリスト13人の眼」=集英社新書)http://www.jvja.net/shueisha.html

昨日の深夜、NHKの再放送で「オレを覚えていてほしい」
http://www.nhk.or.jp/etv21c/update/2005/0723.html
http://www.publiday.com/blog/adrift/
を寝る前に偶然、たまたまみつけて、そのまま最後までずっと見た。久しぶりにちゃんとテレビを見た。BBSを見ると、僕と同じように「偶然」見た人があの時間帯であっても、いやあの時間帯だからこそなのか、相当多かったようだ。
http://6323.teacup.com/alteditor/bbs

テレビという媒体はこうやって、全国の様々な人たち、幅広い年齢層が「たまたま、偶然」出会う可能性は、ほかのどのメディアよりもまだまだ高い。そして何かの「きっかけ」になる可能性を占めている。映画も新聞も雑誌も、ネットでさえも、日本ではまだテレビには及ばないだろう。

昨日の番組は、奥山貴宏さん自身の言葉、ブログに寄せられた様々な人たちからの書き込み、彼が撮った写真、そして友人が撮影していた奥山さんの映像が見事に組み合わさった「メディアミックス・ドキュメンタリー」番組だった。

どこかのテレビ局が毎年やってる「24時間テレビ」はもう見なくていいけど、テレビはこんなドキュメンタリー番組を作るために、見るためにこそ存在する。まだいろんなことができるはずなので、本当に「もったいない」。なので、僕もたまにはちゃんと関わるし、たまにはちゃんと見るようにする。

活字も映像も写真も、まだまだいろんな可能性がある。
活字も映像も写真も、「死なない。ずっと生きている」。

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綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [綿井健陽 Web Journal]
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映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
全国ロードショー上映中
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「枢軸国」の仲間入り?

▼「DAYS JAPAN」9月号(書店で発売中)
http://daysjapan.net/dj/index.html
コラム「現場から」~イラク取材の護衛を巡って
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先週から東北エリアの2ヶ所(新潟・福島)の劇場での上映が始まりました(~26日まで)。
http://www.littlebirds.net/gekijo/gekijo.html
東北エリアは、これからまだ増えると思いますので、ご期待ください。
今週末は大阪と山口でも上映があります。

さて、今週は月刊誌の原稿2本の締切日が重なり、ずっと家でパソコンの前に座っている。なので、あんまり余裕がない。というよりも、編集者からの電話とメールがコワイ。
以下、「休憩時間」を使って短く書き記しておきます。

僕がサマワに行っていた7月下旬、サマワのシーア派指導者サドル派事務所前の道路に、アメリカの星条旗とイスラエルの国旗が描かれているのを見つけた(05年7月26日撮影)。

写真を撮っていたそのとき、同事務所門番の男性が「JAPAN NEXT!」(次は日本だ)と笑いながら話していた。「半分は冗談、半分は本気かな」と思っていたら、先日本当にその一つ先の道路に、日の丸の旗が描かれたようだ。以下のサイトを参照。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050813-02630553-jijp-int.view-001

60年ほど前に日本・ドイツ・イタリアは「枢軸国」だったが、今度は別の「枢軸国」に仲間入りしたようですね。また「同じ道」ですね。

同じ道路上じゃないので、まだかろうじて「別扱い」にとどまっているのか。
それとも、アメリカの言う「悪の枢軸国」(イラン・イラク・北朝鮮)の方に入っておいた方が、まだよかったか…。

いまならまだ、どっちも間に合う?
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綿井健陽 WATAI Takeharu
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「半・反体制」

▼「フォトジャーナリスト13人の眼」(集英社新書)全国の書店で発売中
日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)編
http://www.jvja.net/shueisha.html

※「9・11同時多発テロ事件を追悼する前に」綿井健陽
以前、「信濃毎日新聞」に連載した原稿4本に加筆しました。

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思いもかけず、「ロカルノ国際映画祭」http://jahia.pardo.ch/index.jspで部門賞をいただいたので、特に海外の配給会社・映画祭からの問い合わせメールが、さっそく増えている。

日本でも、友人・知人から「祝福メール」をいただいたりしたが、そもそも「ロカルノ」がどこの国にあるのか最近まで僕も知らなかった。なかには「スカルノでの受賞、おめでとうございます」と、インドネシアか、デヴィ夫人主催の映画祭と思っている人もいるようでした。

今月末は、
「モントリオール国際映画祭」http://www.ffm-montreal.org/en_index.html
「EBSドキュメンタリー映画祭」(韓国)http://www.ebsdoc.co.kr/2005_fall/eng_temp/program_02.html
でも上映されますが、これから海外でも上映される機会がもっと増えそうなのでうれしいことだ。

ちなみに、コンペ部門で落選した「山形国際ドキュメンタリー映画祭」http://www.city.yamagata.yamagata.jp/yidff/home.html からも、別の特集枠で上映されることになったので、「敗者復活」というところか。「アジア千波万波」部門ではアジアプレスの同僚、直井里予の作品がノミネートされている。http://www.riporipo.com/ytt/

全国の皆さん、10月7日~13日は山形でじっくり世界のドキュメンタリー映画を見てみましょう。僕も日程の後半ぐらいで「参加」出来る予定です。

さて、「Little Birds」は日本での上映依頼もまだ増えているが、一方でこんなこともあった。
詳細は月刊「GALAC」9月号 http://www.houkon.jp/galac/index.html に書いたのだが、ここでも少しその経緯を触れておく。

九州の学校関係者から、毎年夏に行われる教員研修の場で上映をしたいと依頼があった。ところがその提案を会議でしたところ、「校長会」のメンバーが執拗に反対したという。

「反対理由」は、「自衛隊がイラクに派遣されているから」「日本政府は米軍のイラク攻撃を支持しているから」などの理由があがったという。

しかし、それでも依頼した方々はその後も上映実現に向けて何度も彼らを説得したそうだが、最終的にどうしても「校長会」のメンバー2人が反対して、結局実現しなかった。最終的な反対理由は「反体制的な内容は教育現場で取り上げるべきではない」とのことだった。

「反体制」=支配体制や時の政治機構を否定し変革すること。また、その立場。(広辞苑から)

最近あんまり見ないけど、ヒロシです…。
「Little Birds」は「反体制的な内容」なのだそうです。
体制に則した内容の映画だったら上映できるのだそうです。

でも、この校長会の人たちは、映画そのものは直に見ていないから、何をもって「反体制」とみなしたのかはよくわからない。せめて、見てから決めてほしかったです。

実は九州地区での映画の上映はこの県に限らず、あまり広がっていない。4月の封切り直後から出足が鈍く、特に映画館での上映がなかなか決まらなかった。自主上映会はいくつかあるが、劇場ではこれまで長崎の一館だけだ。

友人に聞くと、「九州という土地柄はかなり保守層が多い」「自衛隊がいまちょうど九州から派遣されているから」などと言われた。しかし、自衛隊がイラクに派遣された北海道は、これまでもこれからも各地で上映されているので偉い違いだ。

僕も、教員一家の息子なのだが、最近各地で学校の先生方と会うと、学校の現場での「思想統制」「服従要請」が全国規模で本当に広がりつつあるようだ。

その最前線が東京だと思うが、そこで、たった一人の抵抗を試みた先生もいる。
以下の日刊ベリタの連載記事(根津教諭の「停職『出勤』報告」参照)
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200506151114193

しかし、抵抗は一人であっても、その場所から誰か別の「新たな動き」が生まれる。

その昔、故黒田清さんが「半分共産党の『半共』でええんや」と言っていたのを思い出す。

世の中全部が共産党支持者になったら、それは逆にコワイ。
雑誌「週刊金曜日」や「世界」が何百万部も購読される世の中に僕は住みたくない(実際にはいま数万部しか売れていないので、もうちょっと増えてほしいと切に願う)
世の中みんな反体制の人ばかりというのもちょっと困る。

しかし、いまの現時点の世の中を見ると、「半・反体制」ぐらいでちょうどいいのではないかと思う。
僕は「非国民予備軍」だと思いますが、これからは「半・非国民」でいいでしょう。

僕の映画も「半・反体制」ぐらいの内容だと思うのですが、何とか九州地区でも上映機会を広げたいね。今後ともよろしくお願いします。

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綿井健陽 WATAI Takeharu
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不戦勝

新聞などでもすでに発表されたので、ご存知の方も多いと思いますが、
きょう(13日)、ある受賞式に出席させていただきます。
http://www.jcj.gr.jp/jcjprizenew.html

といっても、実は当日に東京・多摩地区で同じ時間帯に2回の映画上映会があります。
http://www.taenoha.com/littlebirds

そちらの方が先約なので、受賞式そのものは「ちょっと顔を出す」だけになります。
主催者・来場者の方には大変申し訳ありません。

受賞そのものは大変光栄なのですが、一方で大変恥ずかしくもあります。
以前、別の賞で以下のような談話・コメントを別のHPに書きました。
http://www1.odn.ne.jp/watai/040220.htm
今回も基本的に同じ思いです。

私の人生のすべての「運」を、これで使い果たしたかもしれません。

11日に都内でジャーナリストの魚住昭さんの講演を聞きました。
http://llfp.j-all.com/

月刊「現代」9月号(講談社)を読めばはっきりとわかりますが、
タイトル通り、「『政治介入』の決定的証拠」を、魚住さんは取材でつかみました。
http://moura.jp/scoop-e/mgendai/
本来、最初に報じた朝日新聞が紙面で詳しく説明すべきことを、魚住さんが「代わりに」その一部始終を独自取材で説明してみせました。

これがジャーナリストの仕事と真骨頂、そして存在意義です。

魚住さんは以前こう書いています。

「記者たちがやるべきことはたった一つしかないと思う。それぞれがいまいる場所から声を上げることだ。理不尽なこと、納得できぬこと、かけがえのない『私』を奪い尽くそうとするあらゆる動きに対して異議を唱えることだ」(「新聞研究」日本新聞協会 02年6月号「記者が本当に自由であってこそ」から)

「記者」と「いまいる場所」の部分に入る言葉は、何でも、誰でも、どこでも同じです。何よりもまず、「自分がいる場所」からです。この国の内部状況を見れば、それが最も重要で、なおかついま、それが最も難しいのだと思います。

同じく共同通信出身の原寿雄氏が、「メディアの内と外」(岩波ブックレット NO.549)で、こう述べています。

「(中略)どうも私は、『良心的』ということと、『良心の発動』とは違うのではないかと思えて仕方がないのです。(中略)私は現在の状況を『一望の荒野』と表現しているのですが、政治も経済も社会もまさに一望の荒野の状況ではないですか。そういうなかで良心的であるだけでは、どうもこの状況を変えていくことはできないのではないか、と思えて仕方がありません。そこでは、単に『良心的』であるのではなく、『良心を発動する』ことが迫られているのではないか。日本の社会全体にも、ジャーナリストにもそれが迫られているのではないか、という感じがしてなりません。」

このところの8月6日、9日の広島・長崎、12日の日航ジャンボ機墜落から20年、そしてまもなく迎える15日の終戦記念日を前に、いろんな追悼や祈りの光景があちこちで続きますが、追悼の次、祈りの次に、何をするのか、何をすべきか、何をしてはいけないのか、何を記憶すべきかが、いま最も重要なことに違いないのでしょう。

そろそろ「発動」しないと、後からでは間に合わない、手遅れになるかもしれません。

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綿井健陽 WATAI Takeharu
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クウェートの新聞から~自衛隊・九条・ヒロシマ

サマワ取材から戻って、ちょっと体調を崩していたが復活です。
いつも帰国して落ち着いたあたりで、気合が抜けて油断して、風邪を引いたり下痢をしたりというのがパターンです。サマワの映像リポートは、来週、再来週あたりにテレビで放送できそうかな。

さて、こちらがバタバタしているうちに、サマワはもっとバタバタしているようだ。

デモに発砲、死傷者も出て、外出禁止令。僕が滞在していた先月下旬もデモはあったが、穏やかな調子で、1週間の滞在中に夜中も含めて銃声を聞いたのは一回だけだった。サマワは少し涼しくなる夕方6時ごろから夜10時ごろまでが、市内に最も人通りが多くなって、夕涼みと買い物ラッシュが続くのだが。

地元の通訳Aさんに電話で話を聞くと(11日午前0時30分=日本時間)、すでに外出禁止令は解除されて、街の様子は「ノーマルに戻った」という。ただし、イラク警察官があちこちにいて、検問所が置かれているようだ。今回のデモの矛先は「州知事」で、直接的には「自衛隊」ではないが、またこれからもこうしたバタバタは頻発するだろう。「電気・水・仕事」の不満は、だいたいいつも州知事や行政に向けられるが、最近はそれとセットで自衛隊の駐留にも反対している。

去年まではこうした動きはシーア派の指導者サドル師のグループだけで、あまり一般の人は集まらなかった。だから「自衛隊撤退」を掲げても、多くの人は周りで眺めているだけだったのが、今回サマワに行ってみると、あからさまに「自衛隊は出て行け」という人が増えていた。

この状況だと、自衛隊が宿営地の外に出て活動するのは当分無理だろう。
あえて言うが、いまは出ない方がいい。自衛隊員のため、そしてサマワの人たちのためだ。

さて、この国の来る選挙で、何を基準に投票すべきか。クウェートの新聞を見て、少し考えてみる。

僕がサマワからクウェートに出国した翌日7月31日付けの英字新聞「ARAB TIMES」と「KUWAIT TIMES」に、どちらもまったく同じ日本のことで、3つの記事と写真が掲載されていた。これは結構驚いた。

一つ目は、自衛隊の九州の部隊がクウェートに向けて出発したこと(福岡での出発式典=右の写真2枚)。
二つ目は、「九条の会」有明コロシアムの一万人集会の様子(スクリーンに大江健三郎氏=左の写真)。
三つ目は、広島で祈りを捧げる人たち(左の写真の中の切り抜き写真で、祈っているのは米国のミュージシャンたち)

写真は以下を参照

「アラブ・タイムズ」(7月31日付)

「クウェート・タイムズ」(7月31日付)。
左端の記事が「日本の軍隊がイラクに入るために、クウェートに出発した」。真ん中上の写真は広島・原爆ドーム。右下写真は「九条の会」の有明コロシアム集会

広島のことは、さすがに日本の新聞でも8月6日前後には大きく掲載されたが、イラクに向かう自衛隊と、「九条の会」の催しの記事と写真が、最近これほど大きく掲載された日本の新聞はあるだろうか?「九条の会」の写真と記事がまた極端にデカイ。

自衛隊派遣と、9条を守る動きと、広島の原爆記念日が、同じ日の新聞に3つ一度に掲載されるというところが日本のいまの状態をある意味で表している。

この3つは本来、同時並行で成り立つものではない。少なくとも、いまの日本が3つの行為を同時に世界に訴えようとしても、それは説得力がない。過去の歴史を見れば、その資格はないだろう。だが、いまの日本はそれを「ねじれて」やってしまっている。

先日は長崎で上映会があり、僕も行ってきた。中学の修学旅行以来だから、20年ぶりだ。前回の記憶はほとんどない。

当然のごとく、原爆資料館や平和公園を訪れたが、その前後の2日間に渡って、主催者の方の案内で「岡まさはる記念長崎平和資料館」に行った。http://www.d3.dion.ne.jp/~okakinen/index.htm

ここの資料や写真を見て、そして原爆資料館に行って、そしてもう一度戻ってくると、まさに原爆投下前後の日本の動き、そして周辺諸国で日本が何をしていたのか、そしてさらには日本の「戦後」までもが非常に立体的に見えてくる。

そう考えると、クウェートの新聞に掲載されたこの3つのうち、どれをやめるべきなのか。それとも、どれをあくまでも続けるべきなのか。

今度の選挙で、何を、誰を選ぶべきか、その基準が僕の中では少し見えてくる。

ところで僕は8月15日、朝から靖国神社に行く予定にしている(ちゃんと起きれるかなあ?)。恥ずかしながら、実は去年初めて行った。あえて言うまでもないが、一応強調しておくけど、参拝ではない。ここに集まる人たちの顔や言葉、表情、姿を、別の意味で記憶しておこうと思う。

特に以下のような人たち、それから主催・後援する人たちを、別の意味でちゃんと覚えておくことにした。http://www.nipponkaigi.org/reidai01/170815kokuminn-tudoi.htm

一人で見る。一人で記憶する。一人で告発する。
別の意味で「靖国で会おう」。

あっ、それから、もう一つか二つばかりお知らせを。

きょう8月11日(木)夜、例のNHK番組改変問題で、とても興味深い話が直に聞けます。
http://llfp.j-all.com/

そして、これが特殊な事件・問題でないことが一冊の本でわかります。
「放送中止事件50年」http://www.mediasoken.org/

以前、僕のHPでもその一部分を紹介しました。
http://www1.odn.ne.jp/watai/050123.htm
今度のブックレットは、その「増補改訂版」です。ぜひ読んでください。

8月12~14日は、表参道のシアターイメージフォーラム3Fで「リーベンクイズ/日本鬼子 日中15年戦争・元皇軍兵士の告白」が上映される。http://www.imageforum.co.jp/cinematheque/869/index.html
何年か前に同じ場所で見たけど、もう一度見れる機会はなかなかなさそうなので、今回もう一回見る予定。場所はこちら http://www.imageforum.co.jp/map/index.html

それから最後は「自社宣伝」ですが、
8月14日(日)、イラク南部バスラの医師お2人が話をされます。
いまのイラクの医療状況を話されますので、これまたお見逃しなく。
僕は長崎で彼らに会ったのですが、当日は「前座」で僕もちょっとだけ出ます。
http://www.jim-net.net/notice/notice050814.html

映画「Little Birds」の中に出てくるバグダッドの病院の様子で、映画の中に入らなかった未公開映像をお見せしようと思いますので、ぜひご覧ください。

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綿井健陽 WATAI Takeharu
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同じ道

▼週刊金曜日(8月5日発売号)掲載記事
http://www.kinyobi.co.jp/Recent
サマワ緊急現地報告「自衛隊に厳しい視線」

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朝8時台の満員電車に乗る機会はめったにないが、なぜか朝8時台のテレビ番組は起きた拍子に何気なく見入ってしまうことが多い。最近は夕方や夜のニュース番組よりも、朝の番組の方が「硬派」なテーマやトピックスを取り上げることが多々ある。

きょうはNHKの朝の番組で、イラクに行った若者たちを取り上げていた。いまは北海道にいる今井紀明さんのほか、以前僕がバグダッドで会った大学生の方も出ていた。

ちょうど彼らは高校生のときに、9・11同時多発テロ事件をテレビで見て、そしてイラク戦争が始まる前や後に、実際にイラクを訪れている。そしいまも、イラクに限らず様々な分野で活動を続けているようだ。とても頼もしい。

僕が高校生だったのころの80年代終盤は、天安門事件、ベルリンの壁崩壊、そして90年の大学入学後に湾岸戦争、ソ連崩壊、カンボジアPKO、自衛隊派遣など、日本も世界も激動の時代を迎え、大きな分岐点を通ったころだった。

そのころ、僕は大学の図書館で「ベトナム戦争」の本・写真集・映像を片っ端から見て、やはり実際にベトナムやカンボジアを訪れた。93年の大学4年生のときには就職活動もせず、再度カンボジアへ行き、あちこち回ってタケオの自衛隊駐屯地に行った。

今回のサマワ宿営地の取材は「門前払い」だったのに(!)、当時の自衛隊駐屯地は「アポなし突撃で」大学生の私にいろいろ中を見学させてくれた。とても親切な自衛隊員の対応をいまでも覚えている。

僕より15歳ぐらい年上の「先輩」たちは、大学のときに「ベトナム戦争」真っ只中で、その後、ソ連が侵攻したアフガン取材をしている人が結構多い。

そう考えると、みんな同じような道をたどっている。
何かの出来事や戦争・事件を契機に、それをメディアで見て、そして実際に自分の目で見てみようと、確かめてみようと現場を目指す。

そして現場に出れば、先輩も後輩もない。若手もベテランも、みんな横一線だ。

最後の最後まで現場で記事を書き続け、自分自身の訃報と絶筆が同じ日の新聞に掲載された作家・佐瀬稔さんは生前にこう書いている。

『〈駆け出し〉という言葉が、何より好きなオレは、いつだって「駆け出したばかり」なのだと。これから以後もそのつもりでいる。』(NUMBER 98年6月18日号から)

僕もサマワ取材の帰りに「寄ってみるか」と一時考えた、イラク南部・バスラで、米国人ジャーナリストが殺害された。そして同行のイラク人通訳も重傷だという。
http://topics.kyodo.co.jp/feature01/archives/2005/08/post_414.html

「ジャーナリスト」の死以上に、「イラク人通訳」までも巻き込まれることが、いまのイラク戦争を取材する困難さを象徴している。

最後に、先日に続き、またおわびと訂正です。

「東京での劇場上映が終了した」と書きましたが、まだ続きがありました。
渋谷・アップリンクで8月5日から毎週金曜日にレイトショー上映があります。
http://www.uplink.co.jp/x/log/000521.html

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ご連絡滞って申し訳ありません

昨日の東京での上映会とトークは、満席を超える360人の方にご来場いただきました。まことにありがとうございました。定員を超えてしまい、会場に入ることができなかった方、本当に申し訳ありませんでした。

東京での劇場上映は先月末で終了しましたが、この後も8月13日、9月11日、9月16日に上映会が開催されます(詳細は以下参照)。
http://www.littlebirds.net/gekijo/gekijo.html
お近くの場所でご覧いただければ光栄です。

イラク取材中を含め、この2~3週間の間にいただいた連絡やメールなど、返信が一部滞っている可能性があります。申し訳ありません。今週中になんとかチェックし直して処理できると思いますが、もうしばらお待ちください。

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綿井健陽 WATAI Takeharu
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帰国しました

成田空港から、自宅に到着しました。

きょう(2日)は、これから東京で「特別上映会」とトークがあり、それに向けていろいろ準備。
http://www.littlebirds.net/0802.html

久しぶりに自分の手帳を見ると、この後も全国各地を回る予定が入っている。(詳細は以下のHPを参照)http://www.littlebirds.net/gekijo/gekijo.html

4日は、スイスの「ロカルノ国際映画祭」で上映(出席はできませんが)
http://jahia.pardo.ch/jahia/Jahia/site/pardosite/lang/en/pid/1

その後は、
5・6日 長崎
13・14日 東京
16日 新潟
20日 和歌山
21日 福島
24日 三重
26日 大阪
27・28日 山口

26日からは「モントリオール国際映画祭」で上映(これも出席はできませんが)
http://www.ffm-montreal.org/en_index.html

しかし、29日からはお隣の韓国に行って、「EBSドキュメンタリー映画祭」に出席する。
http://www.eidf.org/2005/eng/index.htm

そのほかに、映画の上映だけのところもいくつかありまして、ぜひお近くの場所でご覧ください。皆様にお会いできれば光栄です。

サマワの最新映像をお見せできる機会もあると思いますが、テレビ番組での映像リポートも予定しています。もうしばらくお待ちください。

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綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [綿井健陽 Web Journal]
http://www1.odn.ne.jp/watai

映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
全国ロードショー上映中
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